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YazarNurten Yalçın29 Nisan 2026 14:11

日本人アーティストの視点からオスマン帝国を描く――桃山あおいインタビュー

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 あるマンガを想像してみてください。舞台は東京でもなければ、侍の物語でもなく、学園ものでもありません。そこに描かれているのは、16世紀のオスマン帝国です。

 

オスマン帝国は、単なる歴史の舞台ではなく、模様や色彩、形が重なり合う美の世界でもあります。その世界が、何世紀もの時を経て、日本人アーティストによって再び描かれています。

 

私が桃山あおいを知ったきっかけは、日本ではなく、トルコで報じられたあるニュースでした。その中で、日本人の漫画家がオスマン帝国を題材に作品を描いていることを知りました。正直なところ、とても興味深いと感じました。日本人がオスマン帝国を描くというのは意外でしたが、同時にどこか納得できる部分もありました。歴史を振り返ると、オスマン帝国と日本のあいだには友好的な関係が築かれてきたからです。

 

このことをきっかけに、「ぜひこの作家にインタビューしてみたい」と思うようになりました。しかし、連絡を取るのは簡単ではありませんでした。SNSのアカウントは見つかったものの、メッセージ機能は使えない状態でした。そこで、作品が掲載されているサイトの「ファンレター送信」の欄を通じて、インタビューのお願いを送りました。正直なところ、返事が来るとはあまり思っていませんでした。



三日月の国 オスマン千夜一夜(桃山あおい)

しかし、予想外にも返事が届きました。こうして、地理的な距離のため、インタビューはオンラインで行われました。やり取りの中では終始、温かく率直なコミュニケーションが続き、その雰囲気は回答の一つひとつにもよく表れていると感じました。

 

桃山あおいは、『三日月の国 オスマン千夜一夜』という作品の中で、戦争や政治ではなく、芸術や日常生活、そして個々の経験に焦点を当てながらオスマン帝国を描いています。東京の学園ものや侍の物語とは異なり、本作は16世紀オスマンの細密画工房を舞台とし、顔料をすり、金箔を用意し、模様を描く一人の見習いの視点から物語が展開していきます。この点で、従来の英雄譚とは異なり、オスマンを「手仕事」や「美」、そして「創作」の世界として描いています。

 

この作品では、一人の芸術家の成長物語にとどまらず、当時の社会や文化の姿も丁寧に描かれています。とりわけハレムのように、しばしば誤解されがちなテーマも、日常の視点からより現実的に表現されています。また、細密画とマンガのあいだに見られる視覚的な共通点――平面的な構成、鮮やかな色彩、細部へのこだわり――も、この作品の魅力の一つです。こうしてオスマン帝国は、単なる歴史上の存在ではなく、豊かな視覚世界として改めて捉え直されます。

 

本稿のインタビューは、こうした関心から実現したものです。桃山あおいがどのようにオスマンを捉え、この世界を描いているのか、そして異なる文化を自らの表現で語ることの意味について、その言葉を通して感じていただければと思います。


インタビュー本文

1. オスマン帝国を題材としたマンガを制作しようと思われたきっかけは何でしょうか。

最初からオスマン帝国漫画を描こうとしたわけではなく、当初は数あるアイデアの一つでした。連載に入る前の会議では様々なネタを出しました。江戸時代の日本を舞台にした時代劇、プロイセンの悪徳地主をオーストリアの魔法使いが退治する話、チベットの理想郷シャンバラに住む高僧がガンジス川の妖怪を退治する話、男勝りな西洋の女傭兵がオスマンの後宮に入れられて苦労する話。

 

そういったアイデアを出す中で、最も編集部から「見た目が華やかで面白そう」と評価の高かったのが、オスマンの話でした。そこで読切版『新月の皇子と戦奴隷』を描き、これが好評だったため同じ世界観の『三日月の国』連載となりました。

 

そうしたわけで最初からオスマン帝国に詳しくはなかったのですが、描くために調べていくうちにどんどんその魅力と奥深さに取り憑かれ、今ではオスマン帝国の大ファンになっています。


三日月の国 オスマン千夜一夜(桃山あおい)

2. 日本から見たとき、オスマン帝国のどのような点に最初に魅力を感じられましたか。

豪華絢爛たる美術、精強無比なる軍隊、そして三大陸から集結された多様性に満ちた文化に魅力を感じます。

 

特に絢爛たる美術と言うのが重要で、連載会議で出した数々の案の中でオスマン案が抜きん出た理由がこれでした。編集部曰く、新連載というものは何も知らない初見の読者が見ても楽しめる事が大事で、オスマン帝国には初見でも素敵だと思える美しいものが満ちているとの事でした。建築、装飾、衣服などです。レオ編で扱うトルコタイルも、その美しいものの一つです。


3. 本プロジェクトを始める以前に、オスマンの歴史や美術とのご縁はありましたか。

実は全くありませんでした。学校の世界史で習ったのみです。この漫画を描くためにほぼゼロから調べて描いている状態です。


4. 作品では、戦争や政治ではなく、美や日常生活を中心にオスマンを描かれていますが、これは意図的なご選択でしょうか。

その通りです。私も始めは戦争や政治を扱う予定で、第二章ファイサル編で戦争を若干扱っていますし、第三章ルシア編でも少し政治に触れています。しかし作画のあおいから「先行のオスマン作品で戦争や政治は皆描いているから、それを主題にしては世に埋もれてしまう」と注意が入りました。編集部からも「本誌は大人向けであるから、もっと渋い仕事漫画として作ってほしい。美術や市井の人々を扱ったほうが良い」との指導を受け、帝国に生きる様々な職業の人々を描くことになりました。


5. 日本の読者に対して、オスマン帝国をどのように捉えてほしいとお考えですか。

かつてのオスマン帝国は世界で最も技術の進んだ国で、他国からも手本とされていた事実を知っていただけたらと思います。また本作で扱っている時期からは数百年後になりますが、オスマン帝国と日本が非常に仲良い関係であったことも、もっと知られてほしいものです。


三日月の国 オスマン千夜一夜(桃山あおい)

6. 物語の中心人物として、スルタンではなく細密画工房の見習いを選ばれた理由をお聞かせください。

単なる見習い絵師の少年を主人公にすることで、一般読者、特に美術を志す若者たちの共感を得ることを狙いました。また、絵師が主人公であれば、作画のあおい自身の経験も活かせると思ったからです。実際に、シャークル師匠とレオのやり取りや作品選考のエピソードは、過去の仕事での経験やこれまで編集者から受けた指導を元に描かれています。

 

なお史実の細密画工房では、新人に個性はあまり求められず、師の指示を忠実にこなすことが重視されたと聞きますが、現代読者の共感を得るため、あえて作中では選考会を開催して各人の個性を追求させました。


7. レオというキャラクターを通して、どのような成長や内面的な物語を描こうとされましたか。

未熟で独りよがりなレオという人物が、周囲の指導を受けて謙虚に成長する過程で、プロの芸術家として「自分にしか描けない」ものを開眼する過程を描きました。そしてそれを支えてくれた師匠や兄弟子たちに感謝し、自分が一番だという驕りを捨てることも一つの成長です。

三日月の国 オスマン千夜一夜(桃山あおい)



8. オスマンのミニアチュール(細密画)と日本のマンガの美的表現のあいだに、どのような関係性を見出されていますか。

 細密画は様々な活劇が平面的に描かれて展開しますので、マンガと似た面があるように思います。例えばイスケンデルナーメに付随する細密画には英雄が龍と戦う場面が描かれていますが、あのように活き活きした人馬が怪物を打倒していく様は、まさにいにしえのマンガの1コマといえるでしょう。また細密画の、見せたい主題以外は簡略化して描くテクニックや、主線や色がハッキリしている画風も、今日のマンガに似たところがあると思います。


9. 本作は日本および海外でどのように受け止められていますか。読者の反応の中で印象的だったものはありますか。

日本でも海外でも「オスマン美術を扱った作品は珍しい」との評価を頂いております。また、第二章以降は美術でなく料理・戦争・後宮などにテーマが移っていきますが、いずれの章もトルコの方々や在日ムスリムの方々から「オスマンやイスラーム文化について良く調べて描かれている」とお褒めいただいており、頑張って調べた甲斐があったと思いました。


また読者の反応で最も印象的だったのは、レオの獅子タイルをトルコタイル画家の窪田有美子先生が実際に作って下さったことです。伝統的なイズニク様式で美しく彩色されており、実物はこうだったのかという説得力を感じました。


10. ご自身のご意見として、人はなぜ時に他者の視点を通して自国の歴史をより深く理解できるのでしょうか。

人は自分のことはなかなか見えないものです。トルコの方も見過ごしているオスマン朝の美しさ、日頃そこで暮らしていると当たり前になってしまって気づかないトルコの美しさ、そういったものがあると思います。それらを日本人である私の視点を通じて再発掘することで、トルコの方にも「我が国にはこんな美しいものがあったのか」と気づいて頂けたら嬉しいです。

 

『三日月の国』は千夜一夜物語つまりおとぎ話ですので、史実とは異なる描写が多くあります。しかし芯である「オスマン朝文化の美しさを伝える」ことについては一貫しているつもりです。本作を通じてより多くの方々にその美しさを知ってもらえたらと思います。

三日月の国 オスマン千夜一夜(桃山あおい)

 桃山あおいについて

桃山あおいは、シナリオと作画をそれぞれ異なる人物が担当する、夫婦によって構成された漫画家ユニットである。本ユニットにおいては、桃山(原作者・男性)がシナリオを担当し、あおい(作画担当・女性)が視覚表現を担っている。両者は異なる分野で培った経験を融合させ、物語とビジュアルが調和した創作活動を展開している。

 

原作者の桃山は、龍谷大学にてインド哲学および仏教学を専攻し、その過程で仏教やイスラームといった伝統宗教に関心を持つようになった。その後、趣味のイベントであおいと出会い、互いの才能を認め合いながら共同制作を開始する。この出会いはやがて継続的な創作パートナーシップへと発展した。

 

作画担当のあおいは、大阪芸術大学芸術学部デザイン学科を卒業後、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(株式会社ユー・エス・ジェイ)に入社し、さまざまなキャラクターのデザインおよび作画を担当した。その後、宝島社にて書籍の挿絵や漫画制作に携わり、現在はそれらの経験を新潮社における漫画制作に活かしている。

主な作品

  • 2017年 — 『お嬢様、「了解です」は上司にNGです。 超一流執事のマナー講座』(作画)
  • 2018年 — 『マンガでわかる! 仕事で絶対ミスしない技術』(作画)
  • 2023年 — 読切『新月の皇子と戦奴隷 ~ダ・ヴィンチの孫娘~』
  • 2025年~ — 『三日月の国 オスマン千夜一夜』(連載中)

受賞歴

  • 2017年 — SILENT MANGA AUDITION 準グランプリ
     『忍べ!熊本城』
  • 2018年 — SILENT MANGA AUDITION 優秀賞
     『7色の翼』
  • 2022年 — 第18回くらげ漫画賞 奨励賞
     『物怪圓満仕置録』


トルコ語本文リンク: Osmanlı’yı Bir Japon Sanatçının Gözünden Çizmek: Momoyama Aoi ile Röportaj | KÜRE Ansiklopedi


英語本文リンク: Drawing the Ottoman Empire Through the Eyes of a Japanese Artist: Interview with Momoyama Aoi

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İçindekiler

  • インタビュー本文

    • 1. オスマン帝国を題材としたマンガを制作しようと思われたきっかけは何でしょうか。

    • 2. 日本から見たとき、オスマン帝国のどのような点に最初に魅力を感じられましたか。

    • 3. 本プロジェクトを始める以前に、オスマンの歴史や美術とのご縁はありましたか。

    • 4. 作品では、戦争や政治ではなく、美や日常生活を中心にオスマンを描かれていますが、これは意図的なご選択でしょうか。

    • 5. 日本の読者に対して、オスマン帝国をどのように捉えてほしいとお考えですか。

    • 6. 物語の中心人物として、スルタンではなく細密画工房の見習いを選ばれた理由をお聞かせください。

    • 7. レオというキャラクターを通して、どのような成長や内面的な物語を描こうとされましたか。

    • 8. オスマンのミニアチュール(細密画)と日本のマンガの美的表現のあいだに、どのような関係性を見出されていますか。

    • 9. 本作は日本および海外でどのように受け止められていますか。読者の反応の中で印象的だったものはありますか。

    • 10. ご自身のご意見として、人はなぜ時に他者の視点を通して自国の歴史をより深く理解できるのでしょうか。

  • 桃山あおいについて

    • 主な作品

    • 受賞歴

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